スマホの王国への旅
言葉がわからないと困る。この日本での異国体験はスマホの切り替えの時である。もちろん、かねてが悪いのだが、パスワ-ド、ID、アカウント、アドレスなんて意識せずに、スマホでニュ-スを見たり、映画の上映時間や、飲み屋への道順を探したりとお世話になりっぱなしである。ところが、バッテリ-がもたないからと一念発起、スマホの国を尋ねた。まずは、飛び込みで相談に行くと、入国拒否。「予約しなさい」とQRコ-ドつき名刺を渡されて門前払いである。スマホ王国には手続きがないと入国どころか近寄れない。しかし、同じ国でも、キャッチサ-ビスで入国を促すところもあるから不思議。「乗り換えると新機種が1円となります」「通信料金が半額です」と甘い言葉で入国を誘ってくる。これだから、スマホ王国はどうなっているのかわからない。
予約して10時に入店した。今度はタブレットを渡されて、「なぜ換えるのか」ら始まり、家族構成や家族の使うスマホのことまで、最後は電気料金やどんな使用など、個人情報をことごとく吸い取られた。入力にも手間がかかるから、近づくのも容易でない。いよいよスマホ王国の扉は開かれた。「テレビで宣伝する機種がほしい」といったら、「人気機種の在庫がありません」と断られた。「これならあります」と名前も読めないような機種、色違いの5種類を見せられた。もう意欲は失せて、はいこれと指さした。ここまでは自分の言葉が通じた。
王国の方が「お客様のプランを見てみます。この機種に換えられて今までと同じにすると9800円で変わりませんね」と言われて愕然とした。キャッチで誘われた王国では2500円とか言っていた。「機種は分割で払い、通信料を載せても、お客様は5ギガ使い放題にしても3ギガくらいしか使わないから、1500円も値引きされますよ」「毎月、これくらいで大丈夫です。」と笑いながら言う。「このご時世に1万円も通信料に払うなんて変人だ」と王国に住んでない人々から言われそうだ。プリントアウトした紙を見せながら、「25回めで返すと17800円はいりませんよ」と、たった2年の辛抱だよと慰めの言葉をかけられ、とうとう契約した。王国へは下を向きながら入った。ここからスマホ王国の言葉が次々に押し寄せる。デ-タ移動は5500円、コ-ティングも同額ですが、耐久度あがりますよ。脆弱なソフトもありますから、このノ-トンで補強しておきます。たったの5500円です。次々に押し寄せる訳の分からない言葉にすべて、「はい」と答える。スマホは実にお金が好きだ。「分割で払うとポイントもつきますよ」と乗り換えだけでも料金が跳ね上がる。スマホ交換のために貯金すること、スマホ王国で言葉に迷わないようにかねてからメモすること、そして、何より本当に必要なサ-ビスを理解して活用すること。王国を後にしながら、新しいスマホなのにちっとも軽くないのを実感した。