はじまりの日に
学校の4月はあわただしく始まる。別れの3月から間がない。今でこそ、離任式(昔は辞任式)も3月25日と早くなった。昔は31日で、本当にぎりぎりまで勤務した。4月2日ころ、着任する転勤先では、職員の名前すら覚えないうちから仕事がはじまり、名前を間違うなど、失礼も多かった。国語教師というだけで、校務分掌の表を書かされるのには閉口した。大きさは広幅用紙2枚と指定され、文字はこれくらいと注文がうるさかった。6日の始業式までの大きな宿題だった。さらに、荷物のかたづけも途中なのに、歓迎会もあり、入学式もありと、あまりの忙しさに4月の始まりはよく思い出せない部分もあった。
「黄金の1週間」と言われる入学式からの数日は生徒との出会いやその後の学級経営の成否に関わる大切な時期である。今思えば、仕事を引き受けすぎていつ寝たのかも分からない日々の連続だった。先輩教師から、「入学式には一人一人の名前を覚えて、資料を見ないで、出席がとれる」「兄弟関係を把握して声をかけられる」などを宿題にされ、必至で取り組んだことも懐かしい。入学式後の学活で保護者の信頼を得るにはどうすればよいのかといろいろと考えた。
物事の始まりはいつも未知数のような気がする。しかし、生徒との出会いはかけがえのない瞬間だと考え、時間をかけて準備するに十分値する。教科のスタ-トも教室開きという1時間を特設して、小学校との違い、教科のおもしろさ、毎時間の約束などを指導した。これが1年間の教科経営を決めるのだから、綿密に準備して取り組んだのはいうまでもない。新入生の学級担任として、この1週間は気の抜けない時間だった。中学校生活がわからない生徒にイロハから指導する。ただし、1月前までは6年生として小学校ではリ-ダ-だった。だからプライドはある。その自信をうまく利用すると良い。へたに教えず、小学校で習ったり、身につけたことは応用させてうまくいったことを思い出す。
「初心忘るべからず」の教えは、物事の始まりに自分が緊張したり、何もかも忘れて全力で取り組んだ、あの気持ち(期待感)を忘れずに、今の問題に取り組みなさいということである。もちろん、自分も年をとり、成長し、生徒もかわり、現在の条件はかなり違う。しかし、純粋にがんばろうと決心したスタ-トの時を思い出すと、物事にむかう心構えも自然と新たになる。
若い人が来ると、不思議と学校は活気づく。今朝も印刷室の立ち話で、「若い人がくると、先輩たちもやる気が出るでしょう」と話すと「そうですね。まだ負けてられないですよ」と返ってきた。ナイス返しである、「初心忘れず」には、この先生の返しにある「熱意」も忘れてはらない。4年度の始まりの今日、学校はしっかりと動き出した。今年も数多くの生徒と教師のドラマがここ育英館で生まれることだろう。笑顔と熱意にあふれるスタ-トを職員全員で元気よくきりたい。為せば成る。