科学的な分析と確実な練習は勝利につながる。まさにこの一言につきる。3人1組でスピ-ドを競うパシュ-ト、この種目での日本の勝利は見事だった。そして、空気抵抗を考えて大柄の選手の後につくとか、体力を温存して一気に勝負をかけるとか、たとえは悪いが、少年のころ、はまった漫画「サーキットの狼」の世界である。ランボルギニ-だの、ポルシェだの、とにかく横文字が並び、エンジンドラフトとか、訳のわからない快感(知的な興奮)のある漫画だった。その中で、エンジン性能をカバ-しすごい走りを見せる主人公がつぶやく、「相手の後ろにぴたりとつく。近すぎても遠すぎてもいけない。チャンスは最後に訪れる。そこまでくいついていければ、俺の勝ちだ。」空気抵抗とか、風洞実験とか、物理的な根拠の裏付けは数年後のことになるが、少年の日の思い出にくっきり残る漫画のヒトコマだ。抵抗に打ち勝つ話では、「魚のようになるのが一番」と開発された競泳の水着にも感動したが、科学のサポ-トなしではスポ-ツもままならない時代になってきた。
先頭を走るとそれだけ空気の抵抗を受ける。先頭との距離をキープすると、空気の抵抗が弱まり、消費が抑えられる。最終コ-ナ-でのトップ争いは温存された力に頼るのだから、レ-ス全体を考えると、この距離の問題は欠かせない。どのようにしてそれを考えるのか、それだけでもすごい話だ。ここまでくると、やたらと勉強するのは効率が悪い。自分に合うように考えられた学習を継続することが大事だ。自分に合う、自分しかできないそういうものを身に着けるのが中・高校時代なのかもしれない。
カーリング女子の話でおもしろいのは「モグモグタイム」だ。おやつタイムのことで、2時間をこえて続く競技の合間に栄養補給をする。仕事や勉強の時にもこういうことは必要だ。計画的に休憩することは、効率や緊張を維持できる。そう考えると、どんな休憩が頭によいかを自然とセレクトすることになる。モクモグも大切だし、軽い運動も大切、要するに緊張や集中した時間を長く作り出すことが大切だ。
そして、スト-ンの位置を確認して、おしゃべりをする。だいたい意思疎通ができると、「そだね」が連発される。「そだね」は納得できた時にでる言葉なのだ。この「そだね」が銅メダルへつながった。カ-リング娘の故郷は北海道北見市、地図で場所を確認すれば、一目瞭然で、冬の間は屋内でスポ-ツするしかない。「ここにはなにもない。夢はかなうはずはないと思った。しかし、ここだからカ-リングに出会えた。ここだからオリンピックの夢がかなった。」とある選手は語ったのが印象的だった。
ここまで書きながら、何もないからできるものがあるはず、「少数」は「多数」にまさるとも劣らない。育英館とカーリング娘が共通するのは「人と人のつきあいの濃さ」である。娘たちの父親は、「あの子のおやじと同じチ-ムで、
お母さんとは昔、いっしょに練習した。」と語っていた。
「あの先生も、この先生もこんなに教えてくれた。いっしょ
に考えてくれた。」と生徒が語ってくれる育英館だ。カ-リング娘の銅メダルと同じように、メダルをとれるはずだ。生徒の成長を信じて粘り強くつきあいたい。 「そだね」