きばっど育英館 授業の達人 H29.11.24
生徒集会で話をさせてもらった。12月がやってくるが、君たちは何をどう締めくくるのかという話だった。この言葉は「締める」と「括る」のふたつの動詞からできた複合動詞である。「~を締めくくる」と使うので、目的語を必要とする他動詞である。つまり、働きかける対象がある。授業だって1時間ごとに締めくくる必要がある。よい授業にもこの「締めくくる」が必要だという話をしたい。
よい授業を考える時、目標、山場、まとめが話題になる。授業参観をするとき、大切なのは、まず目標が書かれているどうかである。つまり、今日学習しようとする単位が教師、生徒に分かっているかである。次に生徒たちの協働的な学習が授業の中に位置付けられているかである。「教え合う」という行動は学習効果を格段に上げ、授業への参加や貢献を生徒自身が意識する。授業がうまいといわれる教師は生徒の使い方がうまい。そして最後に、まとめや振り返りがなされているかである。つまり、締めくくりがあるかどうかだ。教師が教えてばかりの授業はおもしろくない。生徒自らが学ぼうと考えはじめると、授業は成功だ。それには、今日の授業を振り返させる一言が大切だ。この一言を聞けば、どの程度の授業力の持ち主かがわかる。これこそが、授業の楽しさであり、最後になんと言おうかを考えるとわくわくする。
禅問答に聞こえるが、上手な指導者は必ず、この一言を用意しているものだ。ペップト-クでもあり、新しい課題を考えさせるなぞかけでもあり、授業の種明かしでもあり、形はいろいろだが、挑戦しても楽しい「最後の一言」である。古くは水戸黄門の「この印籠が目に入らぬか」である。これで前半30分が一挙に巻き戻される。なにしろ、越後のちりめん問屋のじいさんの行動だと気にしなかった一連の話がなんとまあ、そんなに偉い人だったのかと、アハッと脳が活性化する。近頃はドラマの終わりにも、5~6枚の写真がちりばめられる。まさに1時間のふりかえりと次回への意欲付けである。エンディングコ-ルや予告編などの形をとり、近頃テレビでも多用されている。映画も例にもれず、予想だにしないところに次回作の冒頭を入れたりする。
育英館の先生方の腕をさらに上げるために、近頃はやりのこの手法をぜひ活用してほしい。授業のよい場面を5~6か所取り上げて、今日のまとめをしたい。定着率、次回への意欲付けにはかなり効果があると思う。取り上げる場面やそこでの一言を考えるだけでも、授業の楽しみは増し、教師の力も伸びる。ぜひお願いしたい。
学級日誌は生徒の反応の宝庫である。中村文昭さんの話の翌日は、感動のオンパレ-ド、そして、高杉晋作の劇、無言作業、テスト対策等と読ませてもらった。その中に、授業の感想に「話し合う」、「まとめを書く」、「理由を考えた」と授業タイプが変わりつつあることを感じさせる表現を見かける。新しい学力は生徒の変容で身についたかどうかを判断するべきだ。考えるスキルが身につけば、しめたものだ。「教育は人なり」の言葉通りで、どんなに機器が発達しても人間の行う働きかけにまさるものはない。授業の達人とは本当にシンプルなこと(学ぶ気にさせる)ができることなのかもしれない。