きばっど育英館 自習のできるクラスづくり H29.5.22
以前勤務した学校で先輩教師からほめられたことがあった。「宮元さんのクラスには驚いたよ。入って2月もたたない1年生なのに自習ができる。すごいなあ。帰りの会も先生がいるのかと思っていたら、生徒が進行して連絡事項を発表しているし…」ここまで話すと、生徒の質がよかったからと言われそうだが、この話は初めて勤務した学校でも同じことを言われたと付け加えたい。生徒の自主性を高めることで、十分可能なのである。また、中学1年をなめてもらってはこまる。彼らはついこの間まで小学校最上級生で5年生以下のお手本だった。できないことはなにもないのである。
まず、違いを教えて、新たなル-ルで約束をすること。小学生との違いは自分で考えてやること。先生に言われる前にやること。新しい中学校のル-ルについては、細かくいっしょにやることが大切だ。中学校はレベルが高い。小学校でできたつもりでも、中学校ではさらに努力が必要であると教えたい。そして、まずは自分たちでやらせてみる。できた部分は、ほめて、やり方を定着させる。足りない部分は注意して、また、やらせてみる。中学生としての基準を明確に示すことがまず必要だ。
ある程度したら、ある日、突然、黙って出張する。ここで、その一日がきちんとできたら、しかっりとほめる。そして、次なる目標を提示する。帰りの会、朝の会、作業と次第に生徒たちに任せる部分を増やす。できたらほめる。足りないときは新しく指導する。なかなかできない項目は、しばらくできるまでいっしょに行う。こうやって自分たちでやれる場面を増やしながら、学級を独り立ちさせていく。
学級を育てるというのはこんなふうにやることだ。次のように生徒に語る。「どのクラスも担任の先生がいるときは立派にやれる。うちのクラスもそれなりにやっている。それは先生も認める。さて、みんな、君たちなら『先生がいなくても自習ができるクラス』になれそうな気がする。明日、先生は出張でいない。自習の時間や帰りの会は自分たちでやれるかな。先生のいるときより、しっかりやるんだよ」こうやって何回か経験させると、次第と自習のできるクラスへと育っていく。このクラスでは、修学旅行などの集団行動時、何も言わなくても集合するし、教師でなく生徒同士で連絡達示ができる。生徒を信頼できているし、心配することもなかったことを思い出す。
最後の学校でも自習のできるクラスづくりに1年生から取り組んでもらった。その成果は、2年生で出てきた。400名という大人数でも時間に遅れることなく、また、夏日の長崎自主研修、荒天のスペ-スワ-ルドでも体調不良やけがもなく、実に見事な修学旅行だった。生徒たちの自主性を高めることは教師にも都合がよい。いちいち言う必要がないので、本当に必要な話ができる。例年にない合格者を出し、高校生になった彼らが特に優れたわけではないが、自主性の高まりは感じられた。
教師の顔色をうかがい、厳しい教師とそうでない教師で態度を変える生徒では学力も伸びないし、部活動で活躍することもできない。教えるは「厳しく」だが、育てるには「任せる」という別の厳しさもある。生徒の自主性は育っているだろうか。自習のできるクラスはできているのだろうか。育てることも、教えることも大切だ。