テレビの番組ではないが、「あの人は今」というキ-ワ-ドで、年の暮れには一日過ごす日があってもよいのではないかと思う。今年もいろいろな人との出会いがあった。トラブルになったり、助けてもらったり、あの人は今どうしているのだろうか。本当にあれでよかったのかと思い返してみたい。とりわけ、トラブルが継続しているものは、一通りの線を引かないととんでもないことになる。また、沈静化しただけで火種が残っているのも要注意だ。消せなくても、温度は下げておきたい。
好転しているなら今がチャンス。その後を評価し、未来を語ると信頼の絆はぐっと深まる。有能なセ-ルスマンはトラブルがチャンスと苦情処理に力を注ぐものだ。笑顔で対応し、相手の信頼を築き、そして、あの人は今で、信頼を深める。これで、多少の無理がきくようになる。「あの人の言うことなら…」が、お客様の心をあけるカギとなる。苦笑処理といえるぐらいの余裕が出てくれば、たいしたものだ。
教師になると、教え子は年を経る度に増加する。覚えられないのが本当のところで、フルネ-ムで言えるのは、何分の1だろうか。「先生、元気」と声かけられると、「おや、ゆかりさん」と適当に名前を言う。「違いますよ。○○です」と言わせて、「下の名前は、きぬよさんだったよね」と返す。「違いますよ。▼▼です」と言わせて、「そうか、○○□か」とさりげなく返す。「だれですか。○○□は?」と会話を続け、「ごめんね。○○▼▼か、なつかしいね」と軟着陸させる。教師は自分のことだけは覚えていると教え子は思うものらしい。残念ながら、そこまで記憶力はよくない。
そして、同窓会の話題は「先生変わらないね」である。あいさつ言葉の典型だ。失礼な‥外見も随分変わっている。言われなくても変わっています。生徒の目から見ればそうなのかもしれないと慰める。次によく、「先生の言葉で今の自分がいます」と言ってくれると、おせじでもうれしい。それは間違いで、「あなたの努力が自分を変えたのだし、もっと言うとその場に応じて変わらないと人は生きていけないのだよ。」と言ってあげたい。しかし、言わないで「まだまだ甘いなあ」と先生は焼酎を飲む同窓会の季節でもある。教師にも生徒にも「あの人は今」の季節なのだ。
あの人は今の番組に負けない、40人、40通りの人生があるのに驚く。本当に当たり前の話だが、中学校制服のイメ-ジは残るものの、みんな変わっている。中学校時代の面影を探す。どこにどんな形になって存在するのだろうか。生きる核になっているのだろうか。人間の成長は本人のイメ-ジの拡大なのかもしれない。多様性による生き残りをかけたバリエ-ションの増加なのだろうか。同じものは一つとして存在しないが、人として生きるための想定内の変化なのだろう。
あの人は今、私たちも生徒にそう思われているはずだ。だからこそ、この仕事を大事にして、あの人は今でも教師として活躍していると評価されたら幸せだ。教師を続けるなら、生徒に与えたイメ-ジを守り続けたい。しかし、人が成長するとは変わることかもしれない。アイドルが昔と変わらず安心するのもよいが、こんなにも変わったかと生徒たちの成長に感動する「あの人は今」もあってよいだろう。