見せる(魅せる)授業で
保護者参観の日が楽しみな教師だった。若い頃は、せっかく学校に来るのにつまらない授業を見せられ、子供の様子もわからないのでは保護者が気の毒だと思っていた。離島から、鹿児島市内の学校へ転勤した機会に、魅せる授業の日と決めて、教材も親が喜ぶようなネタを準備し、授業の流れも工夫した。そして、授業が終わった後、親子で考えてもらうような宿題も出した。
さて、授業スタ-ト、一人の生徒をうまく使う。最初は全員で読むのだが、とりわけ朗読のうまい生徒を準備しておく。本人には親の前で読ませるから、「がんばれ」と前もって使命を自覚させておく、思いついたかのように指名する。この読みのうまい子のおかげで授業の雰囲気は変わる。保護者が参加したくなるよう授業づくりが大切だ。次は一人一人に感想を書かせる。親が自分の子供が書く様子を確認できる時間を考えて、書かせる。5分書かせる作業なら、半分くらいで「どうぞ子供さんの書かれたものをのぞいてください」と声をかける。教室の中に入り、自分の子を見て、親がうれしそうならほぼ成功である。
次はグル-プ活動の時間である。ここでは、発表する様子を見てもらう。必ず全員が口を開くように作業内容を指示し、相互に意見交流をさせる。活発な発言になるように、取り組みやすい課題を投げかけるとよい。「この詩に出てくるミミコは何歳ぐらいかな?」幼い女の子であることは間違いないが、年齢はわからないから緊張しないで言葉が出てくる。全員がグル-プで発表した後に、理由を述べる生徒を2~3人決めておけば良い。その生徒が無理なく発表できるように、「じゃ1、3、5班のリ-ダ-の人に理由を聞こうか?」と先に進める。保護者にも指名してみたいなあとつぶやき、少し緊張させる。
これくらい進んだら、一斉授業にもどして、板書に付け加える。板書には中央に登場人物、ミミコ そして、気になる言葉「かんこ」「かぼちゃ」を生徒から聞いて書き出しておく。グル-プの話合いが板書に反映される。保護者も生徒ともに板書を見つめる。題名の「独立」がそろそろ気にかかる生徒もいる。「かんこ」はゲタのこと。ただし、ミミコのものでない「とうちゃん」のもの。大人へのあこがれは大人のものを使いたいという行動になる。保護者はこのあたりを知っている。それだけにこの部分を考えさせる時にはうれしい表情になる。ここが魅せる授業のポイントである。親に分かるが、子には今一つの部分がある、後で語ればお互いにわかりあえてさらに読みが深まる。
保護者はわが子がどんな授業の中で、どういう行動をとっているのかを知りたい。授業が明るく、温かであれば、安心して子供を任せたいと考える。また、自分の学生時代を思い出し、なつかしく感じさせることも大切だ。さすがはうちの先生(担任)と感じさせて、信頼を勝ち得るチャンスにしたいものだ。