生活記録での声かけ
「生活記録で1行の声かけをする」担任になると、これが毎日の日課になる。生徒の考えや思いをとらえ、ある時は後ろから背中を押し、ある時は前から手を引く。この声かけは、楽しみでもあり、忙しい時にはけっこう大変でもある。
そんなときは、副担任にも週2で読んでもらい、一言書いてもらうのも良い。たまには、部活動顧問や担当してくださる教科担任もお願いしたい。生徒も新鮮に感じるし、人が違うと心にも響く。さて、どんな一言を書くかはペップト-ク(人を短い言葉で激励する)をお勧めしたい。心に眠る可能性を引き出すつもりで書いてみるのも一つである。「できるできるきっとできる やれるやれるきっとやれる」この短いひらがなのくりかえしは、激励としてはかなり効果がある。「私迷っています」とだけ書かれると、教師の一言もなかなか出てこない。具体的なものがあれば、アドバイスもしやすい。それが見えない時は「答えはないという解もあります」と書いてみてもよい。どうしても答えを出すというのが、足かせになって迷っていることも多い。具体的な迷いが本人にもわかり、二者選択のレベルになっている場合は「どちらにもよい点も悪い点もあるから、もう一度最初にもどって決めたら…」と、立ち位置をノ-マルに戻すことを提案するのもよい。本人が選択してやれそうなら、「あなたの覚悟がわかりました。さあ一歩踏み出そう」がピッタリとくる。生徒の心に火を灯すのが、教師の役割。人がチャレンジできないのは、熱量が足りないとか、迷いすぎて力が拡散していることが大半だ。だから、教師の一言は実に大きな役割を果たす。「あいさつが大事だ」と生徒が書いたら、「知ったら、実行だよ」と行動化を促していく。「建学の精神の『実利を図り』の意味がわかりました」と書いたら、残りの2つはこんな意味があると説明するのもよい。書かれた決意や覚悟は強化することで、生徒の道徳的な判断力や実行力を育てることにもなる。
評語1行は一年すると、かなりの量になる。それだけ生徒と関われたという証に違いない。百姓仕事で一番大切なのは、田んぼに足を運ぶことらしい。もちろん、田んぼに苗を植えてからが本当の意味、大変である。米という字のごとく、88も手間がかかる。しかし、大事なのは田んぼをよく見ること、田んぼを愛することのようだ。苗が何を求めているかを事前に察知して、それに応えることなのだろう。「よい百姓は田んぼの声を聞ける」らしい。よい教師にはどんな声が聞こえるのだろう。生活記録には生徒の心がよく表出する。そこにどう教師が関わるのか、一言評語は教育不易の部分だろう。ぜひ、今年の生徒にはこの言葉をかけようの思いでお願いしたい。もちろん、生徒の発達段階もあり、個々の事情もあるので、同じようにはいかないが、愛にあふれる教師の言葉は間違いなく、生徒の心に染みていく。たった一言、されど一言である。