必殺技
必殺技は言っている本人が「ない」とわかっている。しかし、だれもが期待しているものだ。話は古いが、ウルトラマンならスペシウム光線、歴代のウルトラマンにもそれぞれ必殺技があった。その後のスポコンドラマでは「消える魔球」や「エックス攻撃」と、今なら内容はともあれ、ネ-ミングがダサすぎて不採用だろう。どんな強敵にも困難にもこの技で乗り越えるから、この頃から必殺技信仰は日本人の基礎・基本となった。アニメでも例外なく、いろいろな必殺技が出てきた。筋肉マンやアンパンマンにも例外なく存在している。途中ピンチにはなるが、最後にアンパンチを繰り出すと、ばいきんマンのメカは遠くにとばされ、消えてしまう。アンパンマンの必殺技は「自分の顔を元気のない人に食べてもらう」技と今でも信じている。心優しい彼?にしかできない必殺技だ。
教育にもこんな必殺技がほしい。生徒たちが授業中に楽しくできるようになる。その子なりにわかるようになる。そんな必殺技はないものか。個別最適な学びという響きはいいが、こんな学びができれば苦労しない。個別や最適にこだわると、間に合わない。まずは、それぞれの必殺技が先だ。
昔、あだ名ライオンの数学の先生は「数学は素直な心(口調はス-ナオと伸ばす)である」といい、おでこ輝く社会科の先生は「ノ-トをうまくとる。ノ-トの半分は予習に使え」といった。自信ある言葉にびっくり、あの時代の必殺技に違いない。高校に進学したら、英語は基本文の暗記とか、社会は年表と地図を覚える、ベテラン教師の言葉を浴びせられた。それぞれ大事なのはわかるが、どう覚えるのかはなかなかピンとこなかった。
あれから50年、脳科学は進み、ICTも出てきた。必殺技も進化したはずだから、各教科で今の必殺技を生徒に伝授してほしい。教科の特性もあるが、どの教科にも共通するものに違いない。だから、9教科で必殺技を指導したい。9パタ-ンも提示すれば、理解できる技があるはずだ。未来がよく見えないから、今ある最高のものを手渡したい。昔の徒弟制度では一番見込みのある弟子に奥義とか秘伝を伝えた。一人に一つである。弟子は一人だけ、すべては口伝や実際の技である。日本の集団教育は効率と標準化で成功した。しかし、本物を育てるには不向きなのかもしれない。歌舞伎などの古典芸能の世界などにみられるシステムこそ本物なのだろう。「好きこそものの上手なれ」は、好きになると頭から離れない。好きなことは何ものにも代えがたい。だから、独特の記憶回路に残っていく。好きにさせることが必殺技なら、とりあえず、先生自らの「好き」を生徒と分かち合うことになりそうだ。先生が楽しむ授業にこそ、必殺技が潜んでいるに違いない。まずはアンパンチ。