授業の腕をみがこう
若い頃は、生徒から「今日の授業は楽しかった」と言われることが最高の評価だと思っていた。そのために、生徒を引きつける導入の工夫には時間をかけた。寝ても覚めても導入、導入を考えたことを思い出す。それでもなかなかうまくいかずに、自分の力のなさに落ち込んだ。教材研究を熱心にして、授業の構想も立てて、今日こそは大丈夫と教室に向かった。教えるつもりでがんばりすぎると、生徒の考えを妨げてしまう。教材研究をしっかりして、構想を立ててと、授業が面白くなると思えば、ついついおしゃべりをしたくなる。しゃべらないように、いっそのこと生徒に授業をさせては?と考えるようになった。
離島の中学校では、生徒が毎時間交代で授業をした。これは実に面白かった。岡目八目で生徒の興味・関心もよくわかるし、教師が気づかない視点にはびっくりさせられた。最後の10分は先生の時間と位置づけ、不足分や訂正を行った。この10分間で教師がやる授業と同じだけの成果をあげようと集中したのは効果があった。生徒たちもおもしろいと喜んだ。小人数編制授業のよさは、生徒が主役になれることだと実感した。ゆさぶりの構造や発展的な課題に向かうなど、この後、意欲や主体性の研究に繋がったことも多い。
生徒の読みとらえた言葉を使って板書を構造化する。まず、気になる言葉を黒板させて、頭の中の考えを見えるようにする。書き出す場所や関係づけのラインを引いていく。自分の言葉や意見が板書になり、それをきっかけに授業が進むことほどおもしろいことはない。達成感や成就感はもちろん、こんなふうに参加できるという意欲づけにもなる。いろんな意味で、授業を生徒にまかせるは実におもしろい。しかし、生徒たちのやる気に授業の出来不出来が左右される。とにかく、褒めるに徹することだ。出てきた生徒の言葉をとことん活かして使う。その言葉のよさを授業で褒める。言葉にこだわり、国語好きになってくれた。試行錯誤しながら生徒ともにたどりついた授業スタイルだった。
10分間の先生の時間が本時のまとめである。楽しくて面白くても力にならないのでは何もならない。今日の授業の種明かしをする、「ここでの○さんの言葉がポイントだったね」「○さんの言葉は、構造化すると具体例の1つだね」と生徒の着眼点をほめる。また、語句と語句の関係を明らかにしたプロセスも評価しておきたい。今日の授業のよさを共感する瞬間である。生徒と教師の一体感がよい授業をつくる。授業改善にも生徒の感想が大事だ。生徒たちの目にはどう映るかを知りうる自由な感想を大切にしたい。生徒のやる気を高められたかどうかは、感想を読めばわかる。授業の腕をあげるなら、本時の目標達成とともに、生徒を教科好きにしたかをゴ-ルにするとよさそうだ。