シンウルトラマン(ネタバレしない程度)
まず、ウルトラマンの歴史を少々。小学校のころ、空想科学番組「ウルトラQ」が始まり、そこにいろいろな怪獣が出現した。まあ、よくも次々にというくらい考え出された。なめくじは巨大化するし、深海から半漁人も来る、次々と日曜のお茶の間を騒がした。こんな怪獣だらけで日本はどうなるんだろうと心配した。番組の中盤で、科学特捜隊という組織が怪獣退治をするという設定となり、このシリ-ズが変わってきた。怪獣はとにかく強い、特捜隊の近代兵器(そのころは信じていた)も歯が立たない。そんな中、宇宙から怪獣を追ってきたウルトラマンのために命を落とす隊員が出た。その隊員に命を与え、自分も地球に残り怪獣と戦う一人として、ウルトマンが設定された。子供たちが大喜びしたのは言うまでもない。今回の映画は、基本的にこの歴史を裏切らない構成になっている。あのころ、日本はよく怪獣に襲われる国だなあと心配していた。今回、その謎解きもきちんとなされた。怪獣出現はあくどいメフィラス星人が地球のっとりのために仕組んだ罠だった。過威獣を出現させ、ウルトラマンの退治方法を見せつけ、それを地球人に売りつけて儲けようとする企みだった。
ウルトラマンと言えば、カラ-タイマ-である。3分間のドキドキを子供に教え込んだ。待てない社会に日本が変容したきっかけでもある。30分番組で怪獣と戦うのだから、どこかでケリをつけないといけない。時間制限を設けたのは大いに受けた。今回はクライマックスでこの制限時間内での戦いが繰り広げられた。怪獣もその食性、行動パタ-ンから分類され、攻撃プランが立てられるなど、自衛隊、官庁との連携もよく描かれている。科学特捜隊のバッジや装備が出てこなかったのは残念だが、エバやゴジラの「シン」を見事に引き継ぎ、この映画も令和版のウルトラマンを見事に描ききった感じである。
庵野監督の趣味と一致したかはわからないが、一番好きだった宇宙人は「メフィラス星人」で、お面まで作って遊んだ記憶がある。今回もしたたかな面を見せていた。山本さんは実にメフィラスらしい。「私の好きな言葉です。○○」はうまい言い回し。「呉越同舟」なんて、日本人の心の機微をつかむ表現、あのころの小学生も立派な大人、よくわかりますよ。ウルトラマンに地球のために働こうと誘い、だます。居酒屋では割り勘でいいだろうとちゃっかり言う。さんざんかき回して、めんどうなことになりそうだと感じると、引き上げる。こんなセ-ルスマン、あるある、いるいるだから楽しい。令和のウルトラマンは複雑なんだと共感できる。長澤まさみさんへのセクハラ問題も強要したのであれば問題だが、巨大化(メフィラスは昔も明子隊員を巨大化させたはず)やおしりを叩いて気合いを入れる場面は、筋やキャラの問題である。さすがに「追跡するために匂いをかぐ」はまずかったかな? 詳しくはぜひ劇場で考察あれ