先輩の教師から習った授業の技はなるほどなあと思うことが実に多かった。机間指導の言葉でくくられるのだが、生徒の机の間を抜けながら,一人一人の学習スピ-ドやスタイルを見ていくというすご技には感動した。
ネタバレすると、資料を配る時、わざと枚数を違える。一列の数より少ないと列の後ろの生徒が「先生足りません」と挙手する。必然的に列の中に入る。「ごめんね」と言いながら、教師はプリントを渡しに行く。そのついでに左右の生徒のノ-トを見ていくという技である。ノ-トをきちんととる生徒は授業後半のまとめで指名しても良いし、逆にてげてげ書いている生徒には、突然、指名して注意を喚起するのもよい。授業の進め方を構想する情報収集である。
「あの生徒はこんな感じだよ」と生徒の評価を笑ってする先輩に驚いたものだ。黒板の前だけでは、生徒はなかなか見えないという教えだった。
黒板に生徒の発表を書かせるのもおもしろい。代表が書いている間に残りの生徒の様子を把握する。真剣に書くのを見ている生徒はよいが、こそこそしているのは集中していない。また、熱心に黒板を写す生徒もいるが、構造的にまとめるので、キ-ワ-ドだけで良い。代表生徒の板書を見ながら、学習スタイルや視覚、聴覚優位なのかと認知スタイルまでもが観察されていた。生徒をよく見るチャンスであることは間違いない。
単元テストや小テストの活用の技は今でも思い出される。小テストをまじめに受けると、単元テストの点数はアップする仕掛けが明確に作られている。当然と言えば当然だが、問題の中にどの程度、混ぜるのかというところにコツがあるようだ。そっくりそのままでなく、理解した者に点数が出る。努力すれば伸びるわけだから、意欲喚起に最高だ。
思い出して書きながら、若いうちにポイントを聞き、習得すべきであった小技がなんと多かったことか。教師の技は盗めと先輩に教えられたが、思えば問題意識が足りなかった。
ノ-ト指導も点検をまめにしなさいと教わった。書く場所を指定して、そこにどれだけのものがメモされているかで、学習の定着度がわかるというのだ。自分でノ-トを作れるようになるまで指導しなさいとも教えられた。自学自習が身につくとか、ノ-トが教科書のかわりになると言われたが、なかなか、そこまでたどり着かなかった。ノ-ト指導一つからも教師力は発揮されるようだ。
技はその人につくものだが、一般化もできるだろう。よい授業やヒントになる指導はぜひ積極的にまねてほしい。自分の小技として紹介できれば、成功だと思う。生徒たちがよりわかるように、よく見て、うまく動かして、生徒が自分でやれるようになる。ぜひ、そんな小技(すご技)を開発して、身につけてほしい。