きばっど ほめことばと心の距離 2019.12.25
行く年の最後に生徒に声をかけるとしたら、それは「ほめことば」にしてほしい。今年一年いろいろなことがあったと語り初めて、「ずいぶん成長したね」「よくがんばったね。」という感じだ。まだまだ足りないところはあるにしてもその子なりの成長を認めてほしい、その上でほめたい。今年一年を振り返ると、有森裕子さんの話ではないが、自分で自分をほめたい一瞬がきっとあったはずだ。「その時間をもう一度思いだそう」という話をしてはどうだろう。生徒を活かす評価のできる教師とはそんな先生だ。「活かす」というのは、自己肯定感をもたせ、自分をよりよく変えていこうという意欲をかきたてることだ。正しい評価をしようと、数字にこだわりすぎて、意欲を欠いてはならない。
「数字の1にはドラマがあり、人がある」と先輩に教えられたものだ。担任に「この“1”はどういうことですか?」と確認する。1という数字は、欠課の1だったり、提出物忘れの回数だったり、一人っ子の1だったりする。1にこだわれば、生徒の顔が見えてくるし、評価も違ってくる。1を2にするのか、しないのか。1、2、3、そう変わっていくものかどうか。生徒の名前をつぶやけば、よいところを探そうとするはずだ。数字の1で終わってはならない。1年の終わりに、数字に新しいドラマを約束したい。まずは褒めることが生かす評価にきっとつながる。 1が一人になる瞬間だ。
心の距離がとれない生徒が多い。70センチという心理的な距離を値踏みしてみたい。学級でのつきあいは、50センチや30センチの場面もある。兄弟が少ない今は、同じ年齢の他人とこれほど近づくことはない。自分の領域に他人が入り込むとたまったものではない。親しい気持ちでかけた言葉が相手にはそうは伝われない。また、身体的な接触があればなおさら深刻になる。幼い頃からチ-ム活動の経験があれば気にしないが、経験のない生徒にとっては苦痛の連続だ。意識しないで人を傷つけている。足を踏んだ人は踏まれた人の痛みはあまりわからない。社交ダンスでパ-トナに足をふまれると悲惨だ。ピンホ-ルに50キロ体重がかかる。思わず、目から火花が出る。そのうち慣れるでは済まされない痛さだ。だから、生徒に心の距離をわかってほしい。学校は安心してその場にいることができる場所、自分の感覚で心の距離をつめてよい場所ではない。間違えば、ハリネズミ同士になる。傷つけあってもなぜだかわからない。たとえ、ハリがあっても、距離をうまく保てば、問題は深刻にならない。この心の距離を変えていく方法がある。それは一定の距離を保ちながら、おたがいを知る努力をすることだ。ほめることだ。感謝することだ。お互いが分かってくれば、心の距離は近づく。今年の最後の日には、周りの人へ感謝の言葉を伝えてみよう。
来年の始まりには心の距離もぐっと近づいているだろう