きばっど 市立病院ライフ回想 1 2019.11.27
11月25日 顎下の縫合部分をしみじみとながめる。「のどを掻き切る」という表現にあたるような切り口だ。平家物語を連想させる言葉だ。それがうまくつながっているから生きている。口腔外科の先生方に心から感謝している。
かかりつけの歯科医からの紹介状をもち、10月21日に市立病院を訪ねた。今思えば、もっと早く行くべきだった。親知らずの痛みと本人が決めつけていたが、この顎下腺腫が本当の原因だった。見た目にも目立つようになってきたのに、「こぶとりじいさんはこぶをオニさんにとられてすっかりよくなりました」という笑いのネタにして、ここ数ヶ月過ごしていた。笑えない、危ない話だ。
今思えば、この10年間、痛いときには顎にサロンパスを貼ってしのいでいた。しかし、ここ1、2年は左側へ首がまわらない。肩が異常にこる、頭痛がするなどの症状が出ていた。当然、呼吸が圧迫され、夜中に目が覚める等もあった。整形外科ではストレスネック、整骨院では体のゆがみと診断されたが、治療してもいっこうに直らなかった。コブに原因があると思わなかった。
診察をうけたら、「大きいですね」と言われ、その後、CT MRIを受けて、3センチぐらいはある腫瘍の全体像がわかった。表面からさわるとコリコリした球体とぐちゃぐちゃした肉とできたコブだった。悪性の可能性もあるとのことで、 PET検査まで受けて、11月13日に摘出手術となった。12日に最終の診断で、食事や言語障害、顔面マヒなどのリスクも丁寧に説明された。新田先生の話を聞き、不思議と心配はなかった。いよいよ13日、昼からの手術といわれて、病室でその時を待った。14時に手術着に着替え、歩いて、手術室へ向かった。ベッドに横たわり、麻酔科の先生から装着する器具の話を聞いているうちに、いつのまにか、寝てしまった。麻酔の効果はすごい。夕方からの2時間30分の手術で無事生還、夜8時ころ?起こされて「しゃべれますよ」の第一声をあげる。みんながしゃべれるの?と驚いたのを夢見心地に見聞きして、また眠りについた。気がつくと、朝、ICUにいる。早朝4時か5時くらいから看護師さんが体を拭いたり、体温、血圧と実にテキパキと対応している。10時くらいに「歩けますか」と、早速、歩行訓練まではじまる。支えられながら10メ-トル歩行可をもらう。安全のために車イスで766へ移動する。
市立病院7階 南病棟766は実に快適な部屋だった。しかも、766-2は窓側で、目の前に広がる市立病院電停付近はまるでトミカタウンだった。電車、バス、車に車で、ずっと見ててもあきない。新型車両ニュ-トラムを見放題の場所だった。ヘリポ-トが屋上にあるので、ドクタ-ヘリまでやってくる。バリバリの音が聞こえたかと思うと、機体が窓に近づき、あっという間にヘリポ-トに着陸してしまう。指宿枕崎線の黄色い菜の花号や宮崎まで行く767系の特急列車も見えてしまうから、乗り物好きな人にはたまらない。