きばっど 実習生を見ると思い出すこと 2019.6.14
学校の6月は実習の季節だ。教師の卵が大学から母校に実習にやってくる。何十年も前の話だが、授業を初めてやった時は黒板を背にする重さをひしひしと感じた。大学3年生の秋、わくわくどきどきで伊敷中に立った。国語の授業は指導の先生がいてそのとおりにやるものとばかり思っていた。
教科主任から指導教諭のケガで4週間の実習のうち、2週間は教材研究と聞かされた。ところが、先生の復帰がさらに遅れるという話になり、2週目からはいきなり授業をする羽目になった。家庭教師を経験しても40名に教えるのは素人である。教科主任も「まあ好きにやりなさい」というのどかな時代である。しかし、生徒はまってくれない。とにかくやらなければの実習だった。
そんな実習の中で試行錯誤して身につけたものがある。思い返しても面白い。その一つが「時計型の丸い指導案」である。けっこう汎用性があると思う。授業をうまくいかせる技として紹介しておきたい。まず、白い紙に円を描く。そして、授業の時間が10時30分から11時20分の50分だとすると、時計の長針を意識して、5分刻みで円周に印をつける。そして、30分のスタ-トから25分の終了を円周に書き込む。その時刻に発言する発問や板書する事項を書く。導入、展開、終末にかける時間配分がわかるように、円を分割する。この指導案なら、どんなに舞い上がっても時間を見失うことなく、授業を進められる。腕時計を外して指導案の中心におくとさらに見やすくなる。
次が「逆三角形に構造化された板書」である。板書計画は重要語句で絵を描くイメ-ジで作成する。重要語句を各頂点においた逆三角の図形を書く。これらの語句の間に関係する語句を配置して板書を詳しくしていく。板書する順番が大切なので左肩には番号を書く。だいたいのコンテを作成しておき、生徒の発表を優先して柔軟化に順番を入れ替える。さて、重要語句同士をいろいろな線で結んで図を完成させていく。できれば、完成の板書は円になるように、語句を取り上げ、配置していきたい。生徒に書かせてみるのもおもしろい。認識の深まりとなるように進めていくのに都合がよい板書だ。生徒の書き込みが自由に配置できるので、自己肯定感も高まる。
次は心構えになるが、「たった一つ教える」である。教材研究するとあれもこれもと教えたくなる。あれもこれもと授業でよくばると、あれもこれも身につかない。1時間に一つという気持ちで授業をしなさいという話である。たっぷり教材研究して、たった一つ教える。どんなに欲張っても教えても生徒が自分なりに理解したことだけしか残らない。
若い日の実習で気づかされたこれらには授業の本質があると今も思える。だから、教育実習のころには、生徒主体の授業はどうあるべきかとあのころにもどって考えてしまうのだろう。