新しい年に
3学期スタ-トが新しい年のスタ-トでもある。学校社会にどっぷりとつかると、暦が2つあることはありがたいと感じる。笑い話ではないが、明治政府は給与の関係で閏月のある太陰暦を早急に太陽暦にきりかえたという。また、伊勢神宮の御師(参拝のプロデュ-ス担当)は、お札と伊勢暦、お土産の特産品をもって、全国を歩いたと聞く。この神宮作成の暦には農耕のスタ-ト時や今日はなんの日の説明が書かれていた。解説つきのカレンダ-というユニ-クなもので、かなり人気があったようだ。
さて、真新しいカレンダ-に書き込む予定はとりあえず3月までが多い。学校では3月の卒業式は実に大きなイベントだ。人生の節目、切れ目と位置づけられるから、ここに向かって全力で取り組む。始業式、受験、そして、卒業式、息つく間もなく、入学式となる。私はこの3ヶ月が好きだ。厳しい冬に人生の岐路に立ち、悩みながらも自分の道を探す。そして、3月、思い出をかみしめて学び舎を後にする。中学生が大人の階段を上る3ヶ月。表情一つも大人に近づく。毎回、がまんするけれど、卒業式はなぜか泣ける。4月には新しい出会いがやってくる。古いと新しいが行き来する時間、これらは学校でしか味わえない。学校という空間でしか、出会えない一瞬一瞬の煌めきを知っているからだ。まるでライブだ。一期一会、先生が、友達が、教室が、どれもがここでしか、この時にしか、存在しないものだらけなのだ。
始まりと終わりの3学期を今年も迎える。二度と会うことのない生徒たち、そう思うと大事にしたい。中高一貫の本校では変わらない継続性も大事だが、中学と高校は大きく違う。生徒と担任は新たな出会いがある。かけがえのない3年間の始まり、それを知るからこそ、生徒たちの夢実現のために我々はどうあるべきか。この問いの重さをかみしめたい。「温かさと厳しさを備えた教師になれ」と先輩たちに言われた。厳しさとは、「縮む」を教えることだ。伸びるためには縮むことも覚えさせたい。伸びるためには地中深く根を張ることも学ばせたい。難しいこと、面倒なことへの挑戦、ここで自分を鍛えてみる。限界に挑戦してみる。ライバルは日本、いや、世界と大きく立ち向かおう。そんなゆさぶりを生徒にしてやれるのが次の学年が見えてくるこの3学期だ。彼らも別れを意識しているから、言葉が心に響きやすいはずだ。
「はじまりはいつも雨」は好きなフレ-ズである。晴だけだと植物は育たない。雨がふってこそ、生命が芽吹き出す。生徒の心に雨を降らせ、新しい芽を育てる。本来はラブソングだが、少し使わせてもらうと、「呼べば素敵な名前と気づいた」の「呼べば」こそ、雨を降らすことだ。一人一人の名前を呼んで、夢の実現にどう支援できるのかを語り合う、そんな3学期をスタ-トしたい。