龍ノ巣の大将
今年の講演会は異色の講師だった。かすうどんと焼き肉の店を経営される畑さん、「大将」に講演をお願いした。保護者の麓副会長と徳之島の「島興しイベント開催」で意気投合された方という紹介だった。実際は龍ノ巣ホ-ルディングスという食品関係の社長である。ところが、講演の中で、本人からほとんどの人が大将と呼ぶので、そのままにしたと説明があった。
失敗だらけの大将の経歴が実におもしろかった。あれこれ骨折47カ所の武勇伝や事故との遭遇をはじめ、開店前に店員が全員逃げたとか、1億の借金返済で夜昼かまわず働いたとかと、お世辞にも成功、運が良いと言えない人生である。格闘技チャプ、身長190センチの大将のぼちぼちと正直に語る様子にみんな親近感が沸いた。
本当の強さは失敗を知ることから始まり、そして人を許すことだと感じた。多くの経験が彼のふところを拡げ、人間的な成長へつながった。人は成功よりも失敗から学ぶと言うが実によくわかるし、彼はそんな生き方を体現した人だった。彼の人柄を一言で言うと、人に対するやさしさの半端ない人である。自分に苦労をかける人、迷惑をかける人にも「ありがとう」を言える。その生き方がすばらしい。案の定、日頃よく注意される体育コ-スのやんちゃ坊主たちも熱心に聞き入っていた。人を許すことや失敗の先にはあきらめなければこんな大きな成功に出会えるという話は実に魅力的だった。
講演の中では何度も愛と感謝の心が取り開けられ、それを伝えるために仕事をやっているというのも心に響いた。役に立つ企業とは?の定義も大将の生き方がよくわかるものだった。マチテラスの言葉の説明で、町をテラスのは愛情であると話された。会社や店は単独で成り立つものではないという考えに立ち、そこに住む人たちの幸せを願うことから始まるというのである。町の皆さんに愛されて、自分の会社、お店が繁盛すればその結果として町をテラスことになる。そんな企業をめざしたいという考え方である。大将のふところの広さに人が惹かれて集まり、大きな徳が生まれている。挫折や失敗は人格のこやしになる。スタッフの方の語りも印象的だった。
生徒のアンケ-トに真剣に応えて、スタッフの方も協力しての質問コ-ナ-も実に印象的だった。常にお客様の満足度を高める講演が意識されていた。「えいえいオ-」のかけ声で終わるのも印象的だった。開店時に全員で店の前でこれをやると決めてあり、中に入った常連さんはこの時間があるのをご存じなので何も言わない。えいえいオ-から今日も始まるという話だった。不幸や失敗はその人がどう立ち向かうか、どんな気持ちでその前に立つかで随分違う意味になる。大将は大きな愛と優しさで育英館中学・高等学校を包んでくれた。