伸びしろとのりしろ
「君は伸びしろがある」とか「まだまだ、君はのりしろがあるはずだ」言っているが、少し違うようだ。前者は「可能性」が主で、後者は「余白、余裕」というニュアンスがある。「しろ」というのは「代」と書いて、苗代 代掻きという農業用語だ。伸びしろの方は、金属業界の用語らしい。
生徒に伸びしろがあると信じるのはよいが、中高一貫ののりしろはきちんと確保したい。高校での学習のスタ-トをうまくきらせるために、今やれることをぜひお願いしたい。大学受験は高1に始まるとベテランの先生からよく聞く。受験校を一日でも早く決めて、そこにむけてがんばる。その気持ちが出てくると、高校1年から学びのスタイルができてくるという話だ。その結果、成績の上がりも早い。高校生活は最初が肝心のようだ。確かに高校3年の9月あたりからいろんなタイプの入試が始まる。高校は実質2年間で3年もあると考えているようでは、大学受験はとうていムリだと思う。
不得意教科克服はなかなか大変だ。しかし、つぼにはまると早いのも確かだ。英語を好きになったきっかけを聞くと、音楽あり、スポ-ツあり、映画ありと実に多彩だ。そして、続けられた動機がおもしろい。担任から一言、「英語だけはやれるな」だったという人も多い。「クイーンにはまりました」という年代もあり、「ビ-トルズは不滅」のご老人もいる。得意な教科をテコにするのも成績アップには必要だ。得意が2つあると、さらに可能性が広がる。まさに伸びしろの世界である。「今からでも遅くない」も箴言である。
中高一貫の内進生はのんびりと構えている者が多い。中高6年でなく5年いや4.5年くらいの感覚をもってほしい。のりしろはしっかりととって中と高をつなぐが、伸びしろを考えるなら、中学校での仕込みは早く、多く、深くである。「育英館中学でよかった」の言葉を聞けるように、この春はもう一工夫、もうひとがんばりしたい。
相互乗り入れというのは鉄道用語のようだが、大学のころはよく聞かされた。専門とか教養に関係なく、2年生後半から3年生前半までの期間で、留年を防ぐために不足単位を取り足すねらいから始まった。もちろん、ここで単位をかせぐと、4年時はほとんど取らなくてよい。しかし、ガッチリいくと免許を複数とれるという代物だった。こんなのりしろの工夫も面白そうだ。
全体像がわかればこそ、前半に集中して学ぶことも大事である。伸びしろは「鉄をたたいて伸びる部分をさす」と書いてある。「鉄は熱いうちに打て」と金属の展性の話ではないが、人も若いうちに鍛えないと伸びないようだ。「代」の漢字を考えるに、「時代」という字にはそれこそ、時の余白が存在しそうだ。余白は人に任される。そこに何を書き、何を植えるか、人それぞれだからこそ実に面白い。