時間を有効に
「時間厳守」というのは時間を守るということだが、その後はどうでもいいのだろうか。その後の数時間を充実させるためには?と考えると、「備え」や「構え」が大切であることは誰でもわかっている。時間厳守は時間を有効に使うまで含んでいないのが、大方の話である。しかし、時間は充実させてこそ意味がある。スタ-ト時間を守るは美徳であり、他人の時間を浪費しないとすれば、それは大事なことである。しかし、パ-ティや打ち合わせなら、その時間を有意義にするという意味も同じように大切である。その部分を考えてみたい。
つまり、1時間分の予習をやっておくことが、その時間を充実させることになる。ぼ-っと過ごす1時間より、予習をすればポイントを押さえて聞くことになる。綾小路きみまろさんは、講演前に必ず、客層をチエックする。どの年齢層のお客様が多いか、どんな話をしているのか。それによって今日の出し物の組み立てやネタを変えたりする。まさに、自分の時間を充実させる技である。もちろん、受け取るお客様にも期待を裏切らない時間になるだろう。たとえば、交渉事ならどんな内容かを知り、いろいろと学んでおくのも良いのだろう。
この時期になると、大学受験の面接練習といって生徒がやってくる。生徒の性格を考えても、実にさまざまである。まず、面接の資料を事前に見せて、アポをとり、やってくる準備周到の生徒もいる。それと対照的に、まさにぶっつけ本番の生徒もいる。時期的に期末テストありで、忙しいのもわかるが、面接練習の時間を充実させるためには、自分事とした工夫が必要だろう。少なくとも、先生にエントリ-シ-トを読んでもらう、志望する学部学科の過去問を研究してもらうのは必要だ。何にでも言えることだが、練習の効果は、時間を有効に使いたいという事前準備にかかっている。
他人の技を身につけるには、自分なりの取組は必要である。見ているだけではけっして身につかない。一代で財をなした大店が二代、三代ともたずにつぶれるのは、初代が体験した経験値が、子や孫に伝わらないからである。他店で修行して実家を継ぐなどは、これを防ぐ手立てで、経験値を高める一つの方法でもある。時間充実を心がけることは未来の時間を大切にすることでもある。
時間は限られているが、「備える」はできる。そして、1時間の本番の後、反省や振り返りの時間が少なくて済むのもこれがあればこそである。私たちの時間はもっと有効に使われるべきだ。約束の時間は始まりだけでなく、目的ある時間のかたまりと考えたい。大事にしたいと思えば、自分化する時間であると行動したい。すべて自分の時間と考えられると、未来に関する自分の態度は変わっていくに違いない。「事前に資料配布」だけでなく、「配布資料には目を通しておく」という備えも忘れないようにしたい。