どうする?家康
毎週なかなか面白い番組を見せてもらっている。視聴率はなかなか大変なようだが、歴史好きの人たちには楽しみな時間だ。歴史は勝利者のもので、負けた人には冷たい。その論理でいくと、家康に都合の良い歴史こそ今の我々が知っている歴史ということになる。そこで真実に近づくように調整してみるとどうなるかという話だ。家康は人間的なやさしさもあるし、当時の価値観で動く冷たさもある。調略で敵を寝返らせる、負けたら皆殺し、どれも当たり前、そんな戦国時代にも「人間的な物語」もあっただろうと考えると、実に面白いもう一つの歴史が見えてくる。「どうする家康」の題名からして問題提起で、よく知られた一つ一つの事件にも新たな解釈を入れた大河の時間となるから面白い。
松元くんの家康は実によい。「人に好かれ、天にも選ばれる人」を好演している。強くないし、いばらないし、悩むし、言い訳もする。そういう頼りない殿様だが、だれのために自分は生きればよいかという答えはぶれない。旗印「厭離穢土 欣求浄土」は、平和で戦のない世の中を意味している。これは日の本の民衆の願いである。今でいえば、常に国民ファ-ストである。戦いに勝てない、信長からこき使われる。そんな中でもみんなのために平和な世をつくろうとする覚悟はある。家来にも敵にも誰に対しても、人間的な対応ができる人である。至誠の人なのだろう。これを違えない限り、天が助けるのかもしれない。
それにしても仕える家来がよい。チームワ-ク抜群である。これは社会人基礎力の一つ、そして、傾聴力も、自分の考えをはっきり言う発信力もある。毎回、それを感じている。さらに、家康には復元力がある。大きな負けをしても、上手に立ち直れる。甲州軍団の強さを冷静に分析し、認めながら戦うところがすごい。武田崩壊後、この甲州軍団をそっくり召し抱え、自軍を強化した話はよく知られている。ライバルのよさを取り入れる柔軟性は復元力そのものだ。
さらに健康に留意した話も有名である。「鷹狩を好む」アウトドア派で足腰は丈夫、薬草に凝って自分で調合するなどは、健康オタクである。そして、食事にも気を遣うとなれば、すばらしい。もちろん、長男と正室を死なせたり、孫娘を大阪城に攻め、豊臣家を滅亡させたりとひどいと思われる行動もあるが、戦国時代であり、しかたない話でもある。これからも「どうするどうする」と人間的に考えながらもそうなってしまうと見ていきたい。鎌倉殿の13人でもあったが、歴史の歯車はいったんまわりだすとなかなかコントロ-ルがきかない。人間の理性や感情もこえてまわる。いつの時代も「正しい」と思うことに精一杯生きることしかできない。みんなで回し始めた歯車は、よいことと悪いことの間を揺れながら、間違いなく、先へと進んでいくようだ。「これどうする?令和の皆さん」と問われたら、歴史上の押しの人物ならどうするだろうかと考えてみる余裕をもちたい。