体験入学の効果
7月、8月に実施された体験入学を見ながら、考えたことを取り上げてみたい。体験した生徒たちの感想を読んでみると、実に楽しかったようだ。自分が役に立っている、受け入れられていると感じる「社会的な認証」は、人が求める欲求の中で、最高位に有り、自信をもたせ、やる気を喚起するのに重要だ。新入生になるべき人?をお迎えする側だった本校の生徒たちも同様に楽しかったようだ。校内に隠された謎を解きながら、時間内に脱出するというゲ-ムに在校生と体験生のチ-ムで参加して、1時間程度、校内を散策した。先輩として頼られることがうれしかった。在校生にも大きな教育効果があった。
「学校は学ぶところ」、そこには勉強という辛い苦しいものがある。そうしないと大事な知識は身につかないという考え方が一般的である。それを不思議に思わないで、信じている人があまりにも多い。実は学校は楽しい所で有り、その気になれば、自分の必要とする知識をいくらでも手にいれられるところである。昔の先生と今の先生は立ち位置がかなり、違う。ムチをふりふりとか、宿題忘れにはげんこつなんてものは、今の時代には一切必要ないのだろう。
さて、学校で楽しく学ぶためには、環境としての楽しさも必要だが、なにより、そこにある人間関係が重要だ。「教育は人なり」という話はそのあたりにある。いろいろ関わる担任教師はもちろん、まわりの生徒との人間関係も大切だ。同じ目的で来たはずなのに、いろいろなことで仲違いしたりするのはおかしい。必要な知識や解決方法を学ぶのが第一で、それに喜びを見つけ出してほしい。
育英館で学ぼうとする後輩たちをどう気持ちよく受け入れられるのかは、この体験入学で実際に体験する出会いから始まる。在校生にとっても大事なことである。先生と生徒の距離が近いと同じように、先輩と後輩の距離も近くてよいと思う。年功序列と仲間意識をバランスよく身につけてほしい。実社会では先輩、後輩をさておき、チ-ムとして活動することも多い。少子化で家庭でも経験が乏しい生徒たちには、人間関係をどう築くかの練習は早いほどよい。
育英館の中、高校を通して、体験をする縦割りの活動は実に貴重だ。もちろん、日常の生活で掃除や係活動でやってはいる。しかし、そこでほめられることは希であり、マンネリ化しやすい。生徒相互では評価が難しく、意欲の高まりまで至らない。その点、体験入学での手伝いは、「学校のために」という目的意識も明確である。その上、体験生たちからの感謝や感動がその場で伝えられる。学校の役に立てた達成感だけでなく、「人から認められている」ので、自己肯定感が一気に高まる。意欲ややる気につながっていく。現代社会ではなかなか学べない「見えない思いを見える思いやりにする」を学ぶことができる貴重な体験でもある。この成果を次につなげましょう。