魅力ある教師に
人生80年の折り返しを過ぎると、前半で会った人のことをふと鮮明に思い出すことがある。その多くがユニ-クな教師だから驚いてしまう。もちろん、厳しかったり、怖かったりとブラックジョ-ク的な思い出がないわけじゃない。しかし、それを差し引いても、楽しい、個性の強い先生が多かった。いまどきの言葉らしく言うと、チョ-・アメ-ジングである。
「円周率の記号は、π、数字は3.14だが、実はこの続きがある」と語り始めて、続きの数字を20個近く並べられると、中学生はもうびっくりである。根の方式はどうやってできるかと黒板にサラサラと書き出す数学教師、エンドウマメの美しい絵とAA aa BB bbの記号で遺伝について、音楽を奏でるように説明された生物の先生、ぽとり、ぽとりとマッチ棒が落ちていく金属の細い棒となかなか落ちない棒、手作り教材で熱伝導をマジックのように‥、とにかく、次から次へと思い出せる。よくもこんなに多くの先生に出会ったものだ。
卒業して、心に残ったものが教育の成果であるという話を聞いたことがある。さて、自分は生徒にとってどんな先生だったのか。同窓会で「国語を好きになりました」を聞いてほっとしている。「シ-ドマン学習はおもしろかった」と言ってくれる生徒は多い。これは課題解決学習の強化タイプで、複式のお世話係や中国の小先生、はては水先案内人のイメ-ジで作り出した学習だ。この役目をもつ生徒を設定して、意見交流をする場面を活性化しようと試みた。それぞれの意見を見える化するために、自己追究されたものを中心におき、三色のポストイット(反対‥赤 賛成‥青 助言‥黄)を添付して、グル-プ机上に概念地図を作り出した。案内人のシ-ドマンの活躍で話合いが活性化され、個人の追究に加え、いろいろなアプロ-チが提案される。一斉に戻すと、参加意欲も、追究も深まり、予想よりも広く、深い解決や新たな課題まで出てきた。たぶん、「生徒と同じように授業を楽しんでいた」教師と映っていたに違いない。
そのころの生徒たちも40代、彼らも人生の後半戦である。登場した先輩教師にはかなわないが、少しでも国語を好きになり、学習方法を人生の生き方の参考にしてくれていたらありがたい。「年々歳々、人新たなり」の言葉もあるので、今の教師も自分の魅力をアピ-ルすることは大事だ。「よい出会い、その教科を好きになる」はこの魅力次第である。どんな人に出会うかで、人生が決まるように、教科を好きにさせられる教師になりたい。「結局、人は人に集まる」ではないが、魅力ある教師にこそ、生徒は集まり、導かれるのだろう。そういう教師になる努力をいつまでも継続したい。夏休みには、ぜひ自主研修を深め、魅力に磨きをかけ、9月からにそなえたいものだ。「先生のおかげで、好きになりました」の一言をゴ-ルにがんばりたい。 為せば成る