「褒めて伸ばす」という言葉があるが、名教師と言われる人はとにかく褒め方が上手である。えびの国際高等学校で長年校長された馬籠先生の校長室だよりに書かれた「褒め方6箇条」をもとに、褒め技を研究してみたい。
1 何かにつけて人を褒めよ。 相手の前向きな生き方を褒め、発想の妙を褒め、手柄を褒め称える。どんな些細なことであれ、人を褒める材料を見つけ出すこと
2 生徒、教職員の名前を覚えて、それをしょっちゅう口にする。言われた相手はやる気が格段に違ってくる
3 誰かを褒めるときは公衆の面前で褒めることを鉄則にする。他人が褒められているのを見ると「次は私も」という気にさせられる。
4 人を批判することはよい結果を生まない。失敗をした人間をとがめるのでなく、うまくできた人間を褒めるべきだ。そうすれば、失敗した人間も自分の非に気づく。
5 落胆して傷ついている時こそ、その人を褒める、気落ちしている生徒や職員がいたら見つけ出し、もう一度希望を与えてやる必要がある。
6 人を褒めるには誠実さが欠かせない。心底から相手を称える気持ちがあれば、いくら褒めても褒めすぎにならない。だが、うわべだけの誉め言葉は必ず相手に見破られてしまう。 (一部引用)
褒めることの難しさにもふれた素晴らしい1~6である。今はやりの表現なら「愛の呼吸 ほめの型 6タイプ」である。2に書かれてあることは「個人的にほめる」である。他の人でなく、あなたを褒めていると意識させるために「名前を呼んで褒める」である。6は褒め名人になる肝の部分だろう。これこそがほめの型の必殺技、「誠実さを出す」である。
1は「よいとこ探し」であり、加点評価である。こういう先生や上司だと人は安心できる。この褒め方は周りから、往々にして甘いと言われることもある。しかし、人を育てるには、「叱り飛ばす」、「俺が鍛えた」よりこのほうがずっとよい。3の褒め方は、「教師は五者たれ」で取り上げられる「役者」の世界だ。褒め方にも計算が必要と言う話である。さりげなくやれるなら一流の役者だ。4は静かにならない学級とか、やる気のない学級を活性化するときに使う手法でもある。ただし、生徒の雰囲気をよく見てやらないと空回りすることもある。学級にある力関係を把握した上で、うまく利用することだ。 やり抜く力の育成を考えると、興味・関心をもつ導入部分は「褒める」に限る。ただし、本人が真剣にやり出したら、厳しさも必要だ。身につくまで継続してがんばらせたい。「初めちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣くともフタとるな」の炊飯のコツは、「褒める」の位置づけを明確にしている。「褒める」は、導入に限り、本物とするには「ぱっぱ」や「フタをとらない」という我慢や厳しい指導も必要だ。褒め名人は厳しさも必要なのは間違いない 。