この言葉の意味は、困難な状況から立ち直ること、形が変わってしまったものを元通りにすることである。この言葉は昨年、次のような記事で有名になった。宇宙飛行士の野口聡一さん(55)が10月31日に国際宇宙ステーションに向かうのを前に記者会見し、搭乗する機体に「レジリエンス」と名付けたことを明らかにした。「困難から回復する力」等の意味があり、新型コロナウイルスで苦しむ世界が元に戻るための力になりたいとの思いを込め、搭乗員全員で相談して決めたという話だった。
何を元通りにしたいのか、何を回復させたいのか。考えてみると、コロナのおかげで、人と簡単に会えなくなった。心の距離が本当にわからなくなった。少なくともこの部分だけは元通りにしたい。行事でも、今まで通用していたことができなくなった。「時間が長くなるので必要最低限とする」を理由に、感謝のことばも言わなくて良いとされた。儀式の中の来賓あいさつは本当にいらないのだろうか。無用の用の値踏みをしないままに、すべてが省略された。体験的な行事が減った。経験値の少ない世代が誕生することになる。
今年はあちこちで新一年生パニックが起こりそうだ。津波的な被害を受けると、学校が崩壊する。高さは10メ-トルになるのか、それ以上なのかはわからないが、「体験不足からわからない、知らない」の津波には、それぞれで連携して受け入れ準備を整えたい。この世代の関わる結果に今後も大きく影響するだろう。因があり、縁があり、果があるという生成の仕組みで、因となる出会いが極端に制限され、当然、育てるべき縁も減少した。結果が変わるはずだ。その結果が原因となり、次が始まるとすれば、さらに結果は違ってくる。
よい因を作り出すのに貢献できるのは多様性である。強靱性、復活力があれば、レジリエンスできる。このレジリエンスは物理学で使われた言葉でもある。ぱんぱんになった風船を押すと、その部分はへこむが、その部分を押し返して、もとに戻そうとする力が働く。この押し返す力、回復しようとする力のイメ-ジである。一見、因がなくなって見えるが、逆になくなることが因になっているようだ。コロナ禍中、行事や学校生活を成し遂げた経験にこの力を感じる。学校、保護者、生徒、旅行業者の連携があり、無事に成し遂げられた研修旅行、部活動の遠征である。そこにはしなやかに対応する力を感じる。
現在、世界のだれしもが苦境にあることは変わりない。だからこそ、それぞれで知恵と工夫を出し合って、生きていく。回復する力は同じようで違う。回復する力には新しい可能性があってよい。押し返すだけでなく、新要素のある、押し返す力になってほしい。経験値さえ補えれば、可能性を抑える要素はない。