きばっど 後の先(ほめるとは) 2019.10.17
「褒めて伸ばす」という言葉があります。「大人だって褒めてほしいのです。」と言う人を見ると、褒められているのに気づかないのか、工夫が必要だと思い当たります。しかし、上手に褒めると伸びるのであって、なんでも褒めればよいということではありません。褒めるためには相手を知ることから始まります。つまり、相手の心の動きを読まなければ、上手に褒めることはできないのです。
剣道では相手の心を読んで攻撃することを「先々の先」(せんせんのせん)とか、「先の先」(せんのせん)と云います。どちらも相手の行動、表情から細かく心の動きを読んで仕掛ける技のことです。(ネットから引用した概要です)
まず、「先」とは、相手の機先を制するという意味です。つまり、動作の起こりを打つという意味です。相手の動作をつぶさに見ている戦う剣道にふさわしい言葉です。具体的には、「先の先」は、こちらの機先を制しようとする相手の心の起こりを打つことです。(現象面では、こちらの出端を狙っている相手に攻め入り、相手が「打とう」と思う瞬間を打ちます。打とうあるいは、受け止めようとして剣先が上がった瞬間に小手を押さえたり、胴を抜いたりします。)
次の「先々の先」はさらに高度になりますが、相手の心の動きを逃さない攻め技です。「先々の先」は、こちらの心の動きを捉えようとした相手の心の起こりを打つということです。(現象面では、攻め合いの中で相手の目の色の変化をとらえ、技を繰り出します。いつでも飛び出せるようにしながら、間合いをとったり、剣先を抑えたりして、目の色が変わる瞬間、自分の技を捨て身で繰り出します)有段者になると面をかぶるに関係なく、相手の表情が分かるのです。
剣道の技にはないのですが、「褒める」には、「後の先」もあり得そうです。相手がほめてほしいと思う機先に応えるわけです。つまり、頼んだ仕事が終わった後に相手の心を読み、褒めてあげる。具体的には、成し遂げた仕事の何がよくて何が足りなかったのかを明確にし、よい点を褒めるのです。これだと相手の心を満足させる褒め方になると思います。「後の先」です。相手の心の動きや目の色の変化で気持ちを読んで褒めれば、褒めことばの技、「後の先」や「後々の先」を達成できるかもしれません。
褒めることも攻めることと同じくらい相手を知ることが大切です。その意味では「先」の教えは有効です。ただほめられるより、褒めてほしい時に、具体的に評価した上で褒めてもらうのが最高でしょう。生徒を活かす評価のできる教師とは、生徒の具体的な姿を認めて、伸ばすように褒められる教師です。日常から生徒の動きをしっかりと見て、褒めてほしいと思うタイミングをとらえておくことが大切です。近頃はやりの「ほめ検定」では「あなたの思いつく褒めことばを50個書き出しなさい」が問題です。さて、何個書けますか。言えますか。