きばっど 数字はうそをつかない 2019.8.1
数学の天才が戦争をどうとらえるか。美しいものの長さをはかり、なぜ美しいかを考える彼は、すべては数式で表されると豪語する。AI研究でもよく話題になるが、世の中はすべて数学で解釈できるという話がベ-スだ。
昭和8年、新型戦艦の造船に関わり、海軍省内で会議が連日、開かれる。これからの戦いは空母と航空機と考える山元五十六は、巨大戦艦建造計画の矛盾点を証明し、廃案にしようする。そのために起用された数学の天才が主人公だ。
数学の天才ではあるが、軍艦なんて見たこともない。設計図から工程、使用材料、賃金など機密事項で皆目分からない中、彼の戦いが始まる。期間は10日間しかないので、緊張感がおもしろさを引き出す。まずは戦艦長門を徹底して調べる。長さを徹底して計ったり、設計図を写したりとひやひやだ。これらをもとに戦艦の設計図をおこす。次に材料や工程、賃金などを調べ、見積もりを作るろうと、造船会社を訪ねる。そこで、資料を精査して、材料としての鉄の使用量と全体経費との関係を示すグラフを導き出す。会議日程を前倒しされ、時間のない中で、彼はこのグラフのもとになった数式を考えつく。そして、新造艦にかかる予算がおかしいことを会議の中で見事に指摘する。結局、歴史は変わらず、この巨大戦艦は作られることとなる。しかし、その建造計画の裏にこのようなドラマがあったこととするのはおもしろい。フィックションだろうが、彼の解決行動には未来を指向するモデルとして評価できる部分が多い。
与えられた課題を解決するために必要なものをぜがひでも手に入れる。課題解決学習は見通しが大切である。天才でも軍艦を知らないのでわからないと長門を計る。朝から晩まで計って計りまくる。「戦艦は左右対称だ。一方を計るとよい」とか、「美しい建造物だ。ぜひ計りたい」という言葉が印象的だ。自分が体験し、理解するのに一番わかる方法を駆使している。「計る」だと信じていることがすごい。そして、自分で戦艦を設計してしまう。戦艦を設計するために造船に関わる文献を読みあさる姿もすごい。課題解決に必要な材料を的確にそろえ、それを理解して使いこなす。一人の人間がここまでできるのはすごい。
最後に時間短縮という要素が加わると、ポイントを絞って発想するところがまたすごい。戦艦建造に関わる多くの書類の数字を見ながら、その相関関係を見つけ出していく。統計学は文系でも必要だといわれるが、数字に関するセンスは人それぞれだ。その意味で天才なのだろう。数学は美しい。それは真実を見事に解き明かす。うそはけっして許されないものだ。数学の天才は真実を突きつけ、巨大戦艦建造案は廃案となる。彼は数学的に戦争を回避した。しかし、この戦艦は「大和」という名をつけられ、作られることになる。日本は戦争に向かっていくしかない。この映画の最後の5分が実に考えさせられる。作ってはならないものをつくる意味は?後は映画館でどうぞ