この時期になると、「感謝」について考えることが多い。自分が生きているのも、働けるのもいろいろな人の協力や支えがあるからだ。わかっているのだが、なかなか立ち止まって感謝するという場面がない。そんなばちあたりな自分も感謝に思い当たる月が12月である。人がこう感謝を考えるのも世界共通らしい。みんなといっしょなんだと慰めも含めて、クリスマスの話を例に、感謝の話を書き出そう。
「赤鼻のトナカイ」さんの歌だって、サンタさんがピカピカ光る鼻のおかげで無事故で配達ができるという感謝の思いが主題である。コンプレックスが長所だったという話は、寒い冬を温かくする話で何度聞いても楽しい。冷酷無比な金貸し、クルゾ-爺さんは自分がどれだけ感謝していない人生であるかを知り、生き直そうとする「クリスマスキャロル」の話は毎年、世界中で上映される。この話には、三人の幽霊が登場する。過去、現在、未来の幽霊である。この話に「もう一つの僕」の幽霊を入れてみると、さらに感謝の度合いは深まる。今の自分になれない不満の幽霊だ。人生の選択の場面で悪い方を選んだ場合である。ではなぜ今の自分は別の道を選べたのかを考えると、逢うべき人との出会いに思い当たる。今があるのはその出会いを活かせたからだ。多くの人との出会い、その支えの上に自分があると感謝することは間違いない。「クリスマスキャロル」の話はさらに深まるに違いない。
「賢者の贈り物」の話も実にすてきだ。お互いがクリスマスのプレゼントのために自分の一番大切なものを売りに出して、相手にプレゼントを送る。夫には金時計の鎖を、妻には髪飾りをそれぞれがプレゼントとした。しかし、妻は豊かな髪を売り、夫は金時計を手放していた。せっかくのプレゼントは役に立たないものとなった。しかし、互いを思うその気持ちは十分に相手に通じた。「あれから40年」の話にすれば元も子もないが、愛情は形やものではないと納得できる。この時期にぴったりの心が温まる話だ。この物語は時を経ても少しも色あせない。感情極暖の世界だ。
よく眠れない人は暖めるとよいという話は、体だけでなく心も温めないといけないようだ。「暖かい」と「温かい」の使い分けがあるように、この時期は心もしっかり温めて元気を取り戻したい。眠れない冬の夜はほっとする暖かい話が大切なようだ。
感謝の話が広がりすぎたところで、今年お世話になった人のベスト10なんて考えると、なかなかよいのかもしれない。出会いや別れ、いろいろな場面でのお世話になった人をこたつの中で思い出してみたい。親や先輩の恩はなかなか返せない。しかし、その思いは後輩や子供にリレ-することはできる。恩返しのリレ-はできそうだ。恩のつく漢字は、恩を知り、気づく「知恩」、それに応えたい、報いたいの「報恩」などがある。このリレ-は、さしずめ「贈恩」「伝恩」なんて言葉になるのだろうか。来年はだれかのベスト10に入るような送る側の一人にもなりたいものだ。
一つ提案だが、今年のクリスマスの夜は、心温まる話をぜひ語り合いたい。そして、最後に同席のみんなに向かって、「今年一年、本当にありがとう」と言うのはどうだろうか。飲んだり食ったりで体は暖めて、よい話をして感謝の気持ちで心を温めよう。