きばっど育英館 原口泉先生の話 その3 H29.10.2
読書好きな文学少女は大学で演劇を専攻し、マッサン女優となった。彼女を育てたのは読書、多くの知識を得て、自分の演技に磨きをかけていく。彼女は日本に来てからも精力的に日本語を学び、とうとうヒロインをやりとげた。すべては読書好きから始まった。読書の効用といえば、西郷にも同じようなことがいえる。幼少期に読み聞かされた「太平記」は、先祖である菊池氏をふくめた南朝方の活躍を描いた物語である。平家物語と同じように多くの人の死についても語られている。「奢れるもの久しからず」を子供心に感じた西郷は、自分を制する規範としたことは想像できる。
西郷や大久保も参加した妙円寺参りの祭神の義弘公400年祭、2020年は国体、オリンピックと鹿児島にも大きなイベントがやってくる。おもてなしの心でお迎えしたい。しかし、その反動も心配されるので、2021年に鹿児島で地域伝統芸能全国大会、2022年には全国和牛大会の実施が予定されている。これらの大会を通して、もう一度、鹿児島の地理的な要因を考え、その特性を理解していきたい。牛は輸送途中でストレスで10キロもやせるそうだ。ホ-ムグランド鹿児島開催ではあれば、全国一はまず間違いない。ワインやチ-ズなど、それぞれ土地の名産物も、これらの視点で考えて活用されてこそ、地域創生のカギとなる。すべて採れた場所でおいしくいただくのが第一だ。
四民平等、万国対等の考えに立った日本の明治維新に、ベトナムをはじめ多くの国が学ぼうとしている。また、明治維新150年を取り上げて、ハーバ-ドをはじめとした世界の有名大学でシンポジウムがもたれている。日本人以上に世界の人々が明治維新に注目し、取り上げているのも事実だ。大河の西郷どんは絶好のタイミングだと思う。この機会に私たちも明治維新とは何かをもう一度考えてみたい。
明治維新を支えたものの一つは、とりもなおさず、薩摩の家庭教育だ。鹿児島の正月の行事で知られる「七草かゆ」は、地域社会へのデビュ-といえる。近所や縁者を7軒まわり、それぞれの家庭で作られた粥をもらう。そこで、7歳になったわが子を紹介するわけだ。どこの家の誰々の子供と顔がわかるから、近所全体で見守り、教育される環境が整う。これより、この子供は郷中のメンバ-として集団の中で育ち、年が上がるにつれ、リ-ダ-としての経験もしていくことになる。その間に社会的なデビュ-が終わった近所や縁者に叱られたり、励まされたりと声をかけられる。社会全体が子供の育成に自然とかかわる仕組みが作られていたということになる。近頃では親戚の子供でもなかなか顔がわからないということが残念だ。
子供は郷中の組の中でいろいろな役割を体験し、成長していく。そして、多くの組をまとめる二才頭となる。それぞれの組の中では、年長の者が中心となり、輪読会で中国の古典などを学び、体を鍛えるために妙円寺参りにも参加する。自分たちの問題を解決するための話合いを重ねて、方針を決め、実行することも自然と身に着けた。「異議を唱えない」は決まった後の話だ。このような教育で明治維新を支えた人々は育ったわけことを忘れてはならない。