校内球技大会の開会式では、「スラムダンク」の安西先生の話をしました。この漫画の桜木花道という主人公は一途にバスケットの打ち込む若者です。お調子者で、お世辞にも理解力の高いという言葉は当てはまりません。そこで、先生はこの男に分かるように話をします。シュートを成功させる回数やディフェンスを抜いて、パスを出す回数などを示します。本人はまったくの素人ですから、失敗したり、達成するまでかなり時間はかかります。しかし、その挑戦の積み重ねがプレイヤーとしての一番大事な基礎体力づくりを兼ねているのです。安西先生のもくろみは見事的中し、花道君はすばらしい選手に成長していきます。
そして、我が強く、チ-ムでプレイができないこの男に、チ-ムでプレイすることの大切さも教えていきます。仲間との信頼があればパスがまわるし、シュートもできるのです。それぞれに役割があり、それをきちんと果たすことが信頼を得ることにつながることを身をもって体験していくわけです。もちろん、高校生活を描いていますから、恋あり、友情ありの漫画です。キャラクターも多種多様なので、きっと自分なりに「推しメン」にも会うことでしょう。人気の出るスポ-ツ漫画は、本人の技術力の高まりを描くとき、必ず、心の成長も描いている点に注目したいと思います。
鹿児島女子高の春バレ-出場の話を聞いたとき、その秘密は?と聞いてみました。それは、「拾って、あげて、考えて、」と今までの指導とは違う部分があるということでした。「拾って、あげて、アタックですよね」と確認してみると、練習ではいろいろな相手を想定し、対策を積み重ねてきた。本番で、どの攻撃パタ-ンで攻めていこうと瞬時に判断できなければ勝てない。練習ですべての対策は終わっている。そこで、「考えて」なのだそうだ。だから、監督はタイムをとらないという話のおちがある。
漫画では、練習場面は試合に比べると描かれることは少ない。このことを聞くと、練習場面にこそ、試合のすべてがあるようだ。考える「材料」が必要だ。
スラムダンクに話をもどすが、上達して天狗になりかかる花道に先生は実戦を経験させます。運動能力は同じでも、よく考え、動くことのできる相手に翻弄され、ボ-ルにも触れない経験をさせます。運動能力の高まりに調整力が必要です。身体バランスや空中姿勢の制御が、バスケットでは必要です。試合の中ではいやでも経験をします。自分の脚力がもたない。自分より相手が跳躍する。そんな厳しい試合の中、安西先生はいいます。「あきらめたらそこで試合終了ですよ」バスケットは格闘技によく似ています。ゴ-ル下でのあたりは半端ではありません。強いチ-ムがマン・ツ-・マンでディフェンスで迫ってくると、ゴ-ルがとても遠く感じます。しかし、後半で相手が押してきた時、こちらにも必ずチャンスはあります。先生の言葉はすべての試合に使える言葉です。冬休みはもう一度、読み返したいですね。自分を信じる強さも必要です。メンタルを強化することはどのスポ-ツにも共通するものなのです。最後に、安西先生は、育英館にもいそうな気がします。