国際教育・グロ-バル人材育成講演会を聞きに出かけた。雨の季節を代表するような日曜日だった。会場は県民交流センタ-2階のホ-ル、入場すると、高校生を中心に、多くの人が座っていた。(留学フェアに来る人はなにかオ-ラがあるなあ)
県教委の西橋指導監のあいさつ後、Tシャツ姿のイケメンが語り始めた。講演会と聞いていただけに、ス-ツ姿でないのにびっくりした。後で分かるのだが、このTシャツこそ、国境なき医師団のシンボルだった。デモDVDを見て、世界のあらゆる国に、要請があれば、24時間以内に医療スタッフと医療施設、器具を届けるという人道援助団体であると聞いて、驚くやら感動するやらだった。
青年医師高橋健介さんは自分の生い立ちを紹介し、外国へのあこがれへと話を進めた。その夢を実現し、国境なき医師団の一人として海外で活動している今を熱く語り始めた。医療ボランティアも大変な仕事である。しかも、現地での生活はサバイバルに近い、医療をろくに受けたこともない人々の命に関わる仕事をしている。その苦労や大変さを少しも感じさせない、さわやかな語りにも感動した。仕事への誇りと国際人として生き方の熱さ、潔さから出てくるものなのだろうか?
説明に活用した写真は仕事を説明するものだろうが、どの場面でもスタッフの笑顔が印象的だった。また、チ-ムの一人一人の写真に役割と人柄をそえて話すのにも好感がもてた。講演後の質疑応答の時間でも、どの質問にも「ありがとうございます」と答え、的確に返事を返そうと努力する。そして、「これでよかったでしょうかね」と聞き返す。講演中に「医療の現場で、失敗が許されない」という話があった。この質疑応答の高橋医師の対応は、正確な意思疎通をどうはかればよいかを実演したものだった。母国語でない英語でのやりとりで、スタッフ間の意志が確実に伝わったかを確認する方法なのだろうと思った。まさに、海外の仕事場ではスタッフ同士の意思疎通こそが第一である。
相手が患者に行った処置や患者に関する情報提供に必ず「感謝やねぎらい」を与え、自分が行う措置や患者への声かけについて、アドバイスをもらいたいという気持ちで確認を繰り返す。この一連の流れなくしては、活動は成り立たないし、信頼を得ることはできない。彼がチ-ムの一人としてよい仕事をしてきたことがよく分かる。英単語より、英文法より、コミュニケ-ションと彼が語った理由が本当に理解できた。だから、伝えたいという気持ちは、「ありがとう」と相手を思いやることからスタ-トする。医療スタッフも多国籍だと思うし、英語の単語や文法を知らないこともあるだろう。だからこそ、互いを信頼し、言いやすい環境を作ってあげることが必要となるのだろう。同じ人間同士は相手を思いやる心でつながると言いたい。
指導監は「自国の歴史や文化を学び、留学先のそれらを知ろうとすれば、相手の多様性を受け入れることができる」と語られた。日本人が大切にしてきた「和」は閉じるものではない。自国のよさを知った上で、相手を理解していこうとする、開かれた「和」でありたい。常に思いやりをもって、つながろうとする「和」でなくてはならないと考えることができた。よい機会を与えていただいた皆さんに感謝したい。